【短編】親愛なる夜
第二章『アトリエ』

僕の背丈

僕は、小さな頃から、絵を
描くのが好きだった。

でも、中学、高校と通過す
る中で、自分の背丈を理解
していた。

僕は、絵描きになることよ
り、絵を描き続けることを
望んだ。

だから、美大を目指すので
はなく、この田舎町でも、
安定した仕事が続けられる
薬剤師を目指した。

都会の大学で学び、薬剤師
になったときは、心底ホっ
とした。

『これで絵が続けられる』
と思った。

故郷の田舎町に戻り、川沿
いの古い民家を安く借りて
住居とアトリエにした。

毎日をやり過すだけの生活
を続ける中で、自分を解放
する場所は、このアトリエ
だけだった。

一人ぼっちの世界が心地良
かった。

『やりたい』ことがあるだ
けで、人間は生きられると
思った。
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