結婚しても恋をする
スマートフォンを手に取り、震える指で電話帳を表示させたが、まさか番号を知っているはずはなく、知っていたとして連絡出来るはずもなかった。
誰に掛けようかと、涙を拭うこともせず暫し虚ろに画面を眺めた。
相手を決めて受話口を耳元に寄せると、数回コール音が鳴ってから聞き慣れた高い声が届いた。
『はーい』
ほっと険しい表情を緩め、事の顛末を粗方説明すると、光梨が答えた。
『……私は、そういう人とは結婚しない』
その台詞は心を刺し、強烈に印象を残した。
この子はつい先日、気持ちをわかって貰えないからと彼氏と別れたところだった。
『だってメンタル弱いからさ、男の人に頼りたいって思うじゃない。しんどいもん。お姉も一緒かと思ってたけど……それでも、お姉が選んだ人だからなぁ。良い人なんだけどね』
視線の先のこたつ机に転がるボールペンに手を伸ばし、爪で弾いた。
幾度も掛けられた台詞、“自分で選んだ人なんだから”。
だけど週末を過ごしていただけの付き合っていた当時は、彼の頼りなさを深く実感出来ていなかった。
クリップ部分を弄びながら、言おうか言うまいか迷った気持ちを小さく声に乗せてしまう。