結婚しても恋をする
「わたしと郷ちゃんの愛情の重さが……違う気がする。重たい……」
此処は人生の先輩に意見を仰ごうと、郷ちゃんが寝静まった夜中に母の携帯を呼び出した。
話している内に、ずっと持っていた感覚が言葉になり、唇から零れ落ちた。
手持無沙汰に窓の側へ寄り掛かり、カーテンを避け空を見上げると、隙間から外気が入り込み肌を冷やした。
「別居してぶち切れて、やりたい放題してちょっと良くなってもまた駄目だ、結局駄目なんだ」
暫し黙って聞いていた母が、口を開いた。
『……それでも、頑張って行くのよ』
夜空に浮かぶ幾らか欠けた丸い月を眺めたまま、その台詞を頭に反芻した。
『夫婦間が軌道に乗っている時も、駄目になっている時も、それを繰り返して、絆を太くして行くの。覚悟が持てないことも、その繰り返しをして、どうにかして覚悟を育てて行くものよ』
経験から来る言葉の重みが、心に降り積もる。
『そう思えない時は、ひとりきりは寂しいから、だから一緒に居るっていうのでも良いと思うけど。とりあえずは』
「……寂しいから……?」
確かにひとり暮らしの寂しさは経験がない。
『それでも辛い時は、私が一緒に持ってあげるから』
「…………」
家族は助けてくれるかもしれないが、宮内課長が助けてくれるわけがない。
既に知っていた事実を、再び思い起こした。