心をすくう二番目の君
新生

あれからも、二回程着信が残された。
いっそ拒否でもしてしまいたかったが、仕事を続けて行くのであれば業務に差し障ってもいけないと思い、踏み切れなかった。

当然ながら春志とも顔を合わせなければいけなかったが、持てる限りの力を注ぎ、何事もなかった振りを貫いた。
向こうは幾らか心乱しているように見受けられたが、次第に合わせてくれるようになった。

射場係長のように食い下がって来なかったのは、助かった。
しかしながら心の片隅で、詰め寄って来ることを期待する愚かな自分も認識していた。
相反する渦巻く情念にもがきながら、やはりあの人と違い気遣いがある彼に想いを馳せた。


幸い雇用転換の件で課長との打ち合わせが増えており、長く席に着かずに済んでいる。

「正社員登用を受けます」
「是非、頑張りましょう。早速、レポートと面談対策を詰めて行きたいと思うんだけど、改善のネタはある?」

「そうですね、前々から設計室のフォルダが見にくいと思っていたので、整理したいと考えています。それと、この間から……先も含めて、派遣の方とか契約の方の入れ替わりがあると思うので……」

結局、ES活動にも参加していなかったが、課長は快く背中を押してくれた。
仕事を辞めてしまうことも考えたが、それも逃げだとしか思えなかった。
強く、動じない自分になりたい。
その想いだけが、今のわたしを奮い立たせていた。

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