心をすくう二番目の君

1週間も経てば幾分楽になる。
ひとりきりの誕生日を迎えたが、先週よりも比較的心中は穏やかだった。
心は案外強く出来ているのかも知れない。

家事を片付けて、気晴らしに買い物へ出掛けた。
これだけ落ち込んでいても、店頭に並ぶお洒落な服を眺めていれば心躍るものだ。

ひとりではなかなか入ることのないアイスクリーム屋で、シングルコーンを注文した。
2着購入した紙袋を脇に携えて、通路へオープンになっているソファへ腰掛け、清涼な甘さを味わう。
日曜の昼下がり、ショッピングモールは人出が増えて来た。
辺りを過ぎ行く、連れを伴った楽しそうな人々を眺めるが、不思議と羨望などは沸かなかった。

それでもスマホは気になってしまい、ちらちらと確認はしていた。
無論、春志からの連絡はなかった。
創一さんからはお祝いのメッセージが入ったらしく通知が出ていたが、開かずにスルーした。


月末にレポート発表会と面談が差し迫っている。
本番まで残すところ1週間となり、資料の体裁を調整したり、右も左も解らないプレゼンの練習に追われていた。

「まだ読んでる感が強いから、語尾はきちんと『です』『ます』を付けてね」

慣れない人前での提案には抵抗が有り、課長からの駄目出しもあったが、思いのほか充実感があった。

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