心をすくう二番目の君
振り返ると立ち上がった春志が、顔だけをこちらへ向けていた。
何食わぬ表情を装いたかったのに、ままならなかった。
「……頑張れよ」
「……はい」
相槌を打つだけで精一杯だった。
彼はたった一言告げたきり、再び椅子へと腰を下ろした。
澄んだ真っ直ぐな瞳に、吸い寄せられるかと信じ込んでしまいそうな程だった。
まだドキドキと鳴り止まない心臓の辺りを押さえて、瞬きを繰り返した。
リーダーに入館証を読み込ませて、退室する。
業務上の必要事項以外に言葉を交わしたのは、久しぶりだった。
あんな挨拶みたいな何気ない励ましひとつで、今も春志が好きだと、はっきりと自覚してしまった。
半月やそこらで忘れられるはずもなく、当たり前かも知れない。
誰も居ない廊下でひとり長い溜息を吐き出して、階段へ向かった。