心をすくう二番目の君
異動の矢先であった花見では多少気も遣ったが、出来ればお酌などはしたくない。
下駄箱の扉を開き中身を取り出した人が、不貞腐れたように不満を表した。
「なんか隣が陣取ってたからさ……」
「あぁ、最近山川さんが仲良くしてくれてて……」
「そっちじゃなくて」
革靴を差し履くと急に改まった面持ちでこちらを見据えるので、睫毛を瞬いた。
段差の分身長差が縮まって、目線が近い。
「……やっと、ちょろちょろしてたのが大人しくなったと思ってたのにさ」
呟くと、合わさっていた瞳は出口の方へと向き直り歩いて行ってしまう。
暫しパンプスを手に引っ掛けたまま固まってしまった。
『そう思ってるの小椋さんだけじゃない?』
自然に受け取れば、春志に諭された通りの意味なのかも知れない。
受け取りたくなくて、有地さんの台詞に触れることなく解散した。