心をすくう二番目の君

合格発表が出た頃、別れ話を切り出したが、寧実が取り乱してしまい話し合いにならなかった。
「何を希望に生きて行けば良いの?」と泣き崩れる様を、虚ろに目に映していた。
なぁなぁのままで終わった。


木蓮が綻んで、春の足音が近付いて来た。
この花を目にすると、自動的にあの頃の寧実が脳裏に浮かび上がる。

当時の寧実は透き通った色白の美少女で、男どもの間では高嶺の花とでも言うべき存在だった。
性格も明るく活発で、少し気が強いところも可愛かった。

「11周年だね。これからもよろしくー」

ワイングラスの淵を合わせて、軽やかな音を鳴らす。
街は宵を纏い始めたばかりの夕刻、緑に囲まれたカントリー調のレストランで向かい合っている。
窓の向こうに佇む、想い出の白い花が視界に映り込む。

「中学の卒業式、思い出すなぁ」

呟いたのは寧実だったが、俺にとっても木蓮は、今もなお昔の気持ちを思い起こさせてくれる大切な象徴だった。こういう状況だから尚更だ。

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