心をすくう二番目の君

カーテンの隙間から恐る恐る覗き見ると、俺を認めたおばさんが薄く笑みを浮かべた。

「……春志くん……来てくれたの……」
「……ご無沙汰してます」

元気だった以前と比べ、随分痩せている。いや、やつれたという表現が正しいかも知れない。

「……ごめんね。寧実が呼び出したんでしょう?」
「……いえ……。すみません、何も持たずに来たりして……」

呼ばれる頻度が増えていて、試験前という状況も手伝い、頭が回らなくなっていた。

「そんなこと気にしないで。それより……あなた達も、26歳になったでしょう……」
「……はい」

何処ともなく視線を漂わせながら、穏やかな表情で続けられる。

「私がこんな状態だから……余計寧実を気にかけてくれて、感謝してる……」

じっと聞き入っていると、振り返った顔は真摯な眼差しで告げた。

「だけど……寧実に縛られることないのよ。春志くんは、春志くんの思うように生きてね……」

思い掛けない台詞に、何と返して良いのかわからず目を合わせたまま立ち竦んでいた。
窓を叩く強まった雨音が、室内まで響き渡っていた。

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