心をすくう二番目の君
「……春志くん。いらっしゃい」
「……すみません、急に……。寧実には連絡入れたんですけど」
「寧実ね……多分、部屋に居ると思うんだけど」
「……あの。お加減、いかがですか?」
階段を振り仰いだ人を、呼び止めた。
聞くと、数回入退院を繰り返していたが、現在は通院しながら薬物療法による治療で寛解を目指していると言う。
例え容態が悪化していたとしても踏み切るつもりだったが、ひとまず肩の荷が下りたような気になった。
中へ上がらせて貰い、部屋の前に立つ。
「……寧実。いるんだろ」
何の音も反応もない。ささやかにノブを下げると鍵は掛かっていないようだった。
「……入るぞ」
注意深くドアを開き、隙間から窺い見た。
暗闇の中、ラグの上に座り込みベッドに伏している。
窓の外に、仄かな街灯の光が浮かび上がっていた。
部屋へ踏み入って、ドアを閉めた。
「…………寧実……ごめん」
姿勢を崩さない背中に向かって、白状した。
「俺、浮気した」
簡潔に言い切ると、僅かに肩が動いた。
「……俺が昨日何処に居たか、解ってるんだろ」
ベッドの上の左手が、シーツをきつく掴んだ。
後ろ姿が戦慄く。
「お前、俺の位置情報見てるよな」