心をすくう二番目の君

小脇に抱えた鞄から、仕込んであったスマホを取り出した。

「今の会話、録ってあるんで。これを聞かれたら、どうなるでしょうねぇ……」

録音中の画面をひけらかして見せつけると、即座に仕舞い込んだ。
いつになく冷やかな蔑みの表情を向けていると、我ながら感じ取った。

これで花澄が守られるなら、姑息な手段でも使ってやる。

強引に端末を奪われるなども想定していたが、眼前の男は顔を青くして呆然と立ち尽くしていた。
殴った証拠にはならないが、奥さんにしろ、上司や社内の人間にしろ、耳に入れば浮気していたことは瞭然だ。信用を失墜させるには充分だろう。
俺も全て明白になるまで追求するつもりはない。

暫し間抜けに口を開いていたかと思うと、自嘲気味に笑う。

「……要求は何だ」
「さすが、話が早いですね。金輪際、小椋さんに迷惑を掛けないこと。むやみに近付かないこと。それさえ守って頂ければ、今の会話は僕の胸の中へ仕舞っておきますよ」

薄く笑ってやると、真顔が目で何か訴えて来るので、視線を投げ返す。
射場が訝しげに、ぼやいた。

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