心をすくう二番目の君

「お前……。やっぱり彼女の男だったのか……? だから終わりにするだとか言って……」
「いいえ? ただのチームリーダーです」

「嘘吐け。ただのリーダーが上司に楯突いてまで此処までする理由があるか。お前こそ、婚約者が居るんじゃないのか? どうなっている」
「……僕には、失うものがないので。結婚間近の彼女もいませんし、特定の彼女もいません。あなたに楯突いたところで、殴り合いでもしなければクビになることもないでしょう」

俺の弁明が何か腑に落ちないと言った様子で首を捻っていたが、そのまま去って行った。

姿が見えなくなった途端、肩の力が抜け脱力する。
壁にもたれ空を仰ぐと、安息が零れた。

実際は早鐘を打っていた心臓の音が、大きく身体に響いている。
胸に充てた左手を握り締めた。
寧実にしろ射場にしろ、俺はこれまで人を懲らしめる為の行動を起こしたことなどなかった。
自分の中にこんな秘められた執念があったことに驚かされる。
例え花澄が射場を求めたとしても、あの男が手を上げたことだけは許せなかったのだ。

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