心をすくう二番目の君
以降もしばしば気に掛けてはいたが、射場は特に動きを見せず胸のつかえが下りた。
後になって気が回ったが、射場の台詞をよくよく顧みると『だから終わりにするだとか言って……』という台詞は、花澄が自ら別れを切り出したような口調に思えた。
更に幾日か過ぎ去った夜、着信が入った。
表示された名前に息を呑んだ。
覚悟を決めて電話に出ると、既に懐かしい高い声が響いた。
『………………久しぶり』
挨拶を交わしたきり沈黙が流れる。刻一刻と時が過ぎ去る中、じっと耳を澄まし、切り出される話を待った。
『春志』
「……うん」
口を切った人に名前を呼ばれて、緊張が走る。
『……もう、離してあげるよ』
「……うん……」
電話の向こうの声は想像したよりも明るく、何か吹っ切れたような清々しさがあった。
『会ったら決意が鈍りそうだから、この電話でおしまい。悪いけど、荷物送ってくれる?』
「……わかった」
化粧品の入ったバスケットだとか、クローゼットの隙間から覗く女物のショップバッグだとか、部屋の至るところに散らばっている寧実の痕跡を順に眺めた。
「……寧実。長い間、ありがとう」
『……こちらこそ。ありがと』
小さな声は、僅かに震えたように聞こえた。
『……最後にひとつだけ。あんなことして、私があの子に何かするかもって、思わなかった?』