心をすくう二番目の君
創一さんは、わたしの世界を変えてくれた人だったのだ。
『へぇ、初めてだったんだ。丁寧な仕事だから、経験者かと思ったよ』
勤め始めて数ヶ月が過ぎたある日、瞳を合わせた彼がくれた言葉。
目の前が煌めいて、その台詞はわたしの心に刻まれたように思えた。
それまでの人生、褒められることに耐性がなかった。
夢破れ、二十歳で社会に出て、右も左も分からない子どもだったわたしは、ただ自活して行くために、ひたすらがむしゃらにもがき続けた20代前半だった。
初めて仕事で認められたと胸を熱くしたと同時に、わたしを見出して貰えたような感覚を抱いた。
やがて他の仲間達からも評価を得られるようになったことから、この人がわたしを変えてくれるんじゃないかと期待は膨らむばかりだった。
始めはごくありふれた、健全な上司と部下の関係だったと記憶している。
残業が続き、話す機会が増えた頃から、徐々に彼からのアプローチが積極化して行った。
学生の頃から一方通行の片想いが多く、かと言って寄ってくる人は好きになれずに、恋人同士になったとしても長く続かなかった。
『上司と思わないで。……って言われても困るか。その……部下が出来るっていうのは、僕も初めてのことなんだ』
初めて食事に連れ出してくれた時、真摯な眼差しを見せたかと思うとぎこちなく照れ笑いをした、気恥しそうな顔が忘れられない。
当時は、彼の真っ直ぐな好意が、純粋に嬉しかった。
今思えばこの人も、シチュエーションに新鮮味を見出して、場の空気に酔っていたのかもしれない。