心をすくう二番目の君
まだイケメンだとかにときめける自分が隠れていたのかと思うと、僅かに安堵を覚え目線を落とした。
わたしの頭の中は、あの人で占拠されてしまっていて、他の何ものも入る隙がないのかと思っていた。
デスクへ戻り社員証の持ち主を探すと、今まさにオペレーターへの指示を終えた様子だった。
声を掛けようとして手元のホルダーを持ち上げると、先程のバックルが目に入った。
よく見ると端の飾りにアルファベットが刻んである。
“N”。……“中薗”のN?
考えている隙に、頭上に気配を察知して顔を上げた。
いつしか間近に迫っていた件の人と目が合うと、鼓動が一度大きく鳴る。
目で物を言うかのような、鋭く刺さる眼差しが怖かった。
顔を青くさせた一瞬の内に、前の人の顔が綻ぶ。
「……錆びて来たんだよね、それ」
冷淡な瞳など見間違いだったかのように、柔らかな声色だ。
会話を広げてみたかったが、詮索してはいけない空気に思えて、お礼を伝えるだけに留めた。
「……どうもありがとうございました」