心をすくう二番目の君

「俺は生。小椋さんも?」
「えーっと……わたしは、カシスビアで」

揚げ物にはやっぱりビールだろうと心に決めていたものの、女子としてはやや躊躇いがあった。
振りでも可愛さを演出したくて、甘いリキュールの入ったビアカクテルを選んだ。
とりあえず前菜盛り合わせと、チキンのバジル唐揚げを注文する。

初めての食事の高揚した空気を肌で感じながら、貴重な時間を味わいたくて見渡した。
天井から淡い色合いのレトロなペンダントライトがいくつも下がっていて、木目調の壁やテーブルで統一された暖かみのある内装だ。

右手の中薗さんが空間に馴染み過ぎていて、見蕩れてしまう。
会社としては本来男性はスーツ着用だけれど、ジャケットスタイルに襟付きのシャツであれば許容されているらしい。
紺のテーラードジャケットにグレーのパンツというカジュアルな出で立ちが、店の雰囲気に相まって格好良かった。


「お疲れ」

飲み物が運ばれると、グラスを合わせて喉を潤した。
思わずきつく瞼を瞑って堪能してしまう。
仕事後のビールだけでも格別だというのに、気になる人が隣に居てくれる。

「それで?」

冷静な口調に浮かれた気分を引き戻されて、目を見合わせ固まった。
いっそ今日の目的を忘れでもしたかったというのが、正直な感想だった。

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