心をすくう二番目の君
スマートフォンが再び振動している。
手に取ると『徐行運転を再開』との表示が浮かんでいた。
いつしか階段の外から届く雨音も、鳴りを潜めている。
「……電車、動き始めたみたいです」
伝えると、中薗さんもすぐにスマホを取り出して、ロックを解除している。
「連絡先、教えて。帰ったら必ず、連絡して」
「……はい」
気遣いが嬉しく、頬が熱くなるのが解った。
だけど同時に、酷く胸が締め付けられた。
「じゃあ……中薗さんも帰ったら暖かくして、風邪ぶり返さないで下さいね」
連絡先を交換して去り際、見上げるとわたしを見つめる顔が、愛おしそうに目を細めた。
頭をぽんぽんと撫でられて、一層胸が熱くなる。
そのまま抱き留められて、背中に受ける指の感触に、また泣きたくなった。
涙が零れないように瞳を閉じて、彼の細い身体に腕を回す。
心を通わせて、嬉しくなかったはずはない。
現状は、互いに相手の人に対する気持ちは既に冷めていると示した、ということだと思う。
なのに、胸騒ぎは収まらなかった。
──本当に、いつか彼女と別れるの?
降り荒ぶ悪天候のように、心のもやは晴れることがなかった。