そしてあなたと風になる
「,,,という感じで、わが社の新コスメ、クレセントシリーズは、今10代や20代に人気のプチプラコスメとは差別化をはかっていきたいんです。」
「高くておしゃれで高級感のあるデパコス路線ということですか?」
百花の説明に、まひるが質問した。
「いえ、デパコスほど高級で手が届かない感じではなく、少し頑張れば手が届く憧れの存在って感じですかね。」
クレセントシリーズは、ファンデーション、パウダー、アイシャドウ、チーク、ルージュをセットで販売し、理想のメークをプロデュースするというコンセプトが売りだ。
テーマは"手の届きそうな憧れ"
今、まひるの頭の中には、抽象的な画像が次々と浮かび上がっている。
しかし、それはまだ、映像におこす段階にはない。
「少しお時間を頂けますか?」
「シリーズ公表まで、まだまだ時間はありますので大丈夫です。」
百花は、興奮を隠そうともせず何度も頷いた。
「ところで、まひるさん」
次回の打ち合わせ日程が決まり、会議室を出ようと立ち上がったまひるに、百花が駆け寄って腕を組んだ。
「明後日、金曜日の夜はお暇ですか?」
甘えるような百花の視線に、まひるはキョトンとして
「ええ、特に予定はありませんが」
と答えた。
「良かった!晴斗とこの二人も誘って、プロジェクトの決起集会をしませんか?」
「初対面なのに、馴れ馴れしいだろ。」
千尋がたしなめようとするが、すかさず三月が助け船を出す。
「いえいえ、わが社の企画担当が、取引先の社長兼デザイナーと副社長をおもてなしするのは当然のことです。」
かしこまって告げる三月に、まひるはフルフルと首を振って、
「そんな堅苦しい接待ではなく、晴くんの友人として誘われた飲み会なら、喜んでお受けしますけど」
と、お得意の微笑みで場を和ませる。
「やった!場所と時間は晴斗のSNSに送っておきますね。まひるさーん、約束ですよぅ」
飲み会の約束が得られて上機嫌な百花をよそに
「よかったな、このチャンスをものにしろよ。」
「なっ,,,!」
と、戸惑う千尋に耳打ちする三月の言葉は、楽しそうに会話を続ける女性2人には届いていなかった。