against
「――なるほどね、帰るわ」

左側からワントーン落ちた声が聞こえてきたけれど、私は目と口をいっぱい開けて、一番星を探していた。

「うん?」と地上に目を移した時には、すでに俊也は階段に足を下ろしていたようで、肩から上がぼんやり見えるだけだった。

変な奴。

急に帰るだなんて。

一番星はいつもと変わらず光り輝いていた。

本当にこれが一番星なんだろうか。

私が知らないだけで、他の星を他の場所から一番だと言っている人がいるかもしれない。

そう思うと、せっかく見つけた一番星に全然興味が湧かなくなってしまう。

興味が湧かないどころか、偽物を見せられているようで、夜空がはじめて嫌いになった。


< 110 / 163 >

この作品をシェア

pagetop