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間違いだったのかな。近く黄色い空からは返答がない。

耳に押し当てた携帯からも、返答はなかった。

プツリと呼び出し音がなくなると、辺りは人の動く時間だというのに静まり返っていた。

人の動く時間だから、こそ、なのかもしれない。

こんなまだ陽のあるうちに家にいては立派な家には住めない。きっと。

発信履歴からもう一度、『奈津美』にボタンを合わせる。

携帯電話の画面は、奈津美の部分だけ違う色で表示されていた。

他と違う、特別な、区別された色なんだ。

私はさっきまで当たり前に行っていた、ボタンを押すということがどうしても、できなかった。

押せないまま、携帯は簡単にパタンと閉じられ、私と一緒にその冷たい家が立ち並ぶ場所から姿を消した。
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