外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
なつみが気味悪そうに眉を寄せる。
私も、妙な薄ら寒さに身を震わせた。


いったい誰……?
なつみの判断通り、私にはまったく心当たりのない人相だ。


「でも、こうも続くと、なんかおかしくない?」


なつみは険しい表情は崩さず、なにか思案するように口元に手をやって切り出してくる。
それには、私も「え?」と聞き返しながら顔を上げた。


「毎回、七瀬が休憩の時間。名乗らず、名刺も置いていかない。七瀬の戻りを待つこともない。なんかさ。会いに来てるのに、『会わない』ようにしてるみたいな」

「ど、どういうこと?」


なつみが言う、訪問者の矛盾する行動に、私は困惑した。


「『ストーカー』を装って、七瀬を怯えさせようとしてるだけみたい。七瀬本人に接触しないのも、真の狙いは七瀬じゃないから、とか」


なつみも、口にする言葉を考えるように、目線を上に向けてそう答えた。
私には訝しい思いしかなく、思わず首を傾げてしまう。
さらなる答えを求めて、黙ったまま先を促したけれど、なつみも困った顔で肩を竦めた。


「ごめん。私もそれ以上は考えつかない」


私は何度か頷き返してから、もう一度広いエントランスを見渡した。
目の前に広がるのは、入社して六年間働き続け、すっかり見慣れたいつもの光景だ。
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