外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
『裏千家周防流』。
茶道が発祥した室町時代まで、先祖を遡ることができるらしい。
茶道界……いや、日本でも屈指の名家なのだ。


次期当主は長男の藤悟さんで、奏介は家を出ている。
とはいえ、奏介ももちろん幼い頃からお茶を嗜んでいて、その腕前は、当主のお義父さんにも跡取りの藤悟さんにも引けを取らないそうだ。


そして私は、奏介の妻としては残念なことに、茶道の知識も経験も皆無。
それでも、『家業の手伝い』と言われてしまったら、周防家の嫁として、行かないわけにはいかない。


結局奏介の説得を諦めて、藤悟さんに『私だけでも、お手伝いに伺います』と答えて電話を切った。
準備は早朝から始まる。
丸一日がかりのお茶会の予定が入ってしまった。


そんなわけで、奏介に『たっぷり愛される』のはまたもお預け……。
そのせいか、奏介は昨夜からわかりやすく不機嫌だ。


さすがに、『七瀬が行くなら、俺だけ拒めるものでもないだろ』と、休日の家業手伝いには同意してくれたけれど、愛車のレクサスを運転する横顔は、どう見ても渋い。


仕事が一段落して、やっと新婚らしい生活が始められる矢先……というタイミング。
そりゃあ私だって、奏介の裁判が終わるのを心待ちにしていたし、がっくりしてるけれど。
お茶会は延期できないわけで、個人的な楽しみは少しだけ延ばそう、と自分に言い聞かせた。
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