外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「な、なに言ってるの、奏介!」


私は挙動不審なほど目を泳がせ、ドキドキと騒ぎ出す胸元をギュッと握りしめた。
奏介は目を伏せ、しっかりと両足で廊下に上がってから、肩を揺らしてくっくっと笑う。


「おかしなことを言ったつもりはないんだが? 俺たち夫婦だし、一緒に風呂くらい今さらだろう?」


胸の前で腕組みをして、探るように小首を傾げる。


「そ、それはそうだけど。でも」


しつこいようだけど、温泉旅行すら一緒にしたことがない。
本当に今日まで、新婚らしい生活をきちんと始められず仕舞いなのだ。
『今さら』とは言われても、お風呂は初めてだし、なによりまだちょっとハードルが高い!


「……お風呂は、恥ずかしい」


私をジッと見据える奏介に目線を合わせられないまま、コソッと呟いた。


「七瀬も、いちゃいちゃしようって言ってくれたのになー……」


語尾を伸ばしたボヤき声が、即座に頭上から降ってくる。


「う……でも。それはちょっと、心の準備が必要というか」


意味もなく両手の指を組み合わせて、モゴモゴと口を動かし、言い訳をする。
奏介は背を屈め、じっとりとした目で、私に無理矢理目線を合わせた。
切れ長の瞳に真っ向から射貫かれて、まるで縫い止められたように、私は目を逸らすことができない。


「っ……」


頬がカアッと熱くなるのがわかる。
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