外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
早鐘のように拍動する心臓が苦しくて、私はぎゅうっと目を閉じた。


途端にふっと小さな笑い声が聞こえる。
次の瞬間、ポンと頭を叩かれて、私はそっと目を開けた。


「そんな顔するな。困らせたいわけじゃない」


奏介はそう言って、私の前から歩き出す。


「あ、そう……」

「七瀬も腕、濡れてるから。俺が入ってる間にちゃんと拭いておけ。これで風邪をひかせたら、俺はきっと、無理矢理にでも一緒に入ればよかったと後悔する」

「っ……」


心臓は、ドッドッと強く激しく打ち鳴っている。
今の言葉でも、奏介が私の身体が冷えることを一番に心配してくれていたのはわかる。
素で恥ずかしがった私の方が邪だったのかもしれない、と思うと、穴を掘ってでも入りたい気分だった。


奏介は私に背を向けて廊下を進んでいく。
途中でバスルームのドアに手をかけるのを見て、私はやっとしっかりと顔を上げた。


「あの。着替え、用意しておくね」

「ああ。頼む」


奏介はちらりと私を見遣り、ニコッと笑ってくれた。
そして、一度中に入ってから、なにを思ったのか、再びひょいと廊下に顔を覗かせる。


「そ、奏介?」


どうしたのか、と首を傾げた私に。


「心の準備をする時間を与えれば、俺と一緒に風呂、入ってくれるのかな」


意地悪に口角を上げて、そんな探りを入れてきた。


「えっ!? そ、それは」
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