外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「七瀬さん、奏介の妻は愛だけじゃ乗り切れない?」


どこか意地悪にニヤニヤしながら、藤悟さんが私の前に腰を下ろした。
袴を広げて胡坐を掻いた座り方。
こうして目の前で見ていても、時代劇の殿様みたいだ。


「いえ、すみません。ただ、私の勉強不足で。……交流会も兼ねたお茶会で、私にお手伝いできることってあるかな?って」


慌ててそう取り繕い、私はぎこちない愛想笑いを浮かべてみせる。
それに彼は「ああ」と軽い相槌を打った。


「いくらかお点前覚えてくれれば、大寄せの時なんかは裏で点ててもらえるんだけどね。今日のところは、七瀬さんは正座してくれてれば」

「っ、え?」

「君のお披露目も兼ねてるし、裏で動き回るのは弟子に任せて。表に出て笑って挨拶してもらわないと。親父やお袋のお点前の時は、奏介の隣。奏介の時は、お袋の隣。要はず~っと正座しっ放しだからね。足が痺れて無様にドスン……ってのだけは避けてほしい」

「………」


それは、つまり……私がいてもなんの役にも立たない、そう言われたってことだろうか。
藤悟さんが綺麗な顔を綻ばせているから、悪意が感じられない分、反応に困る。


逃げるように視線を宙に彷徨わせると、お義母さんがプレゼントしてくれた着物の上で目が留まった。
藤悟さんもそれに気付き、ふっと口角を上げて笑った。
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