外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「着付けなら、俺がしてあげようか?」

「は……い!?」


思わず返事をしそうになって、私はギョッとして目を剥いた。
口にしかけてしまった返事は、語尾を尻上がりにしてなんとか逃げる。


「ついでに、教えてあげるよ。お点前はすぐには無理でも、着付けくらいなら、そう時間もかからずに覚えられる」

「い、いえっ! あの、お義母さんが、お弟子さんに頼んでくださるそうなので」


やっぱり、藤悟さんには悪気はないんだろう。
せっかく『教えてくれる』というものを断るのも失礼かもだけど、自分で着れなくても成人式や友人の結婚式で着たことはある。


ワイヤー入りのブラをしたままだと、しっかりと締めつけることができず、着崩れしやすくなると聞いた。
素肌の上から襦袢を着て、それが下着代わりだったはず。
それに、かなりの至近距離での作業だ。
当然ながら、男性に着付けてもらうなんて恥ずかしい。


私は頬を引き攣らせながら愛想笑いを浮かべて藤悟さんに返した。
そしてもちろん藤悟さんは、私がなにを理由に拒否するか、最初からわかって言っている。


「俺じゃ、恥ずかしい? でも、お袋が呼んでくる弟子が女だとは限らないけど」

「えっ!? い、いや、まさか!」


本当に『まさか』としか思わなかった。
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