外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「へえ。奏介、お前が? 本職も忙しいってのに、いくら嫁さんでも、手取り足取り教える時間、ないだろう?」


どこかからかうようにそう言って、藤悟さんは「よっ」と掛け声をかけて立ち上がった。
そして、ムッと唇をへの字に曲げている奏介の前に歩み寄る。


「七瀬さん自身にもやる気ありそうだし。せっかくいい嫁なんだ。いろんな茶会に出席してもらって、周防家の嫁としてお披露目したいじゃないか」

「それは」

「そのためなら、俺も協力を惜しまないよ。でもまあ、着付けくらいなら、家でなんとかなるのかな」


奏介の横を通り過ぎながらそう言って、彼の肩をポンと叩く。
奏介は無言で眉尻を上げて、藤悟さんに鋭い瞳を向けた。


藤悟さんはそっと肩を竦めて、私と奏介に背を向けた。
そのまま肩の高さでひらひらと手を振り、襖を開けて部屋から出て行った。
襖が閉まるまで肩越しに見送っていた奏介が、私の方に向き直って深く大きな溜め息をつく。


「ったく、あの兄貴は……。って。七瀬? どうした?」


正座したまま畳に両手を突き、まるで身を乗り出すようにして見上げていた私に、奏介がきょとんと目を丸くした。
私の前に進んできて、すっと片膝を着き、私の目の高さで何度か手を翳す。
そうされて、私はハッと我に返った。
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