外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
途端に大きく息をのむ気配がして、さすがに奏介もギョッとしたように目を開ける。


「っ、なっ……!?」


奏介が大きく目を剥き、私から手も唇も同時に離す。


「も、申し訳ありません!!」


襖口で凍りついたように固まり、私と奏介を凝視していたお弟子さんが、我に返ったようにひっくり返った声で謝罪をした。
そして、今更の気遣いを見せて私たちにくるりと背を向ける。


「み、見てません」


いや、嘘でしょ、とツッコむ余裕はない。
奏介の実家で、朝っぱらからいちゃいちゃしてるところをお弟子さんに見られてしまうなんて、嫁として最高に恥ずかしいの一言に尽きる。


「え~と……。十分後にまた伺います」


さらに妙な気遣いをして廊下を引き返していこうとするお弟子さんに、私は慌てて声をかけた。


「ま、待って!」


傍らの奏介をドンと押しのける。
「うっ」と唸る彼を気にせず、二歩ほど四つん這いで前に進む。
開いた襖からひょこっと顔を出し、逃げるように小走りで進むお弟子さんを必死に呼びかけた。


「ごめんなさい! す、すぐに! 着付けをお願いします……!」


激しい羞恥心で涙目になりながら、私はそう叫んだ。


「七瀬、着付けなら俺が……」


畳に尻餅をついた奏介を振り返り、無言で、ほんのちょっとの恨みを込めてジロッと睨んだ。
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