外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「もちろん、家事はしっかりやります。奏介の仕事の邪魔にならないよう、時間がある時だけでいいです」


私はキリッと目力を込めて、握り拳を作ってみせた。
奏介はまだちょっと渋い顔をしていたけれど、私の熱意に負けたのか、「まったく」と息をついた。


「わかった。家でも作法くらいは教えてやれる。……ああ、着付けもだったっけか」


奏介は『降参』というように、私の前で両手を上げる。


「あ、そうそう! それもだった」


私がポンと手を打って頷くと、奏介は「やれやれ」と呟く。
後頭部をシートに預け、顎を仰け反らせて目線を上に向ける奏介に、私はそっと肩を竦めた。


「……ごめんね。奏介」


いつも忙しい奏介に、無理を言っているのは重々自覚している。
上目遣いに探りながら謝ると、奏介はそのままの姿勢で、視線だけ私に流してきた。


「でも、私」

「今朝も言っただろ? 俺の家の事情を考えてくれてるのは、ちゃんとわかってる。だから、七瀬の気持ちもありがたい。俺は夫だから、協力するのが当然だ」

「奏介……」


胸の奥の方が、ジーンと熱くなった。
今日だけで何度、旦那様にときめいたことだろう。
目頭が熱くなってきて、私はそっと目を伏せた。
『ありがとう』と、お礼を言いかけた時。
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