外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「また……忙しくなるってこと?」


疑問形で訊ねながらも、返ってくる答えはわかりきっている。
私の声は最初から沈んでいた。
それには奏介も溜め息で返してくる。


「約束しておいて守れずに申し訳ない。現状、七瀬に作法を教える時間が取れない」

「そう、なんだ……」


奏介の口からはっきり聞いて、私はしゅんとして目を逸らした。


「今夜は謝るつもりで仕事を切り上げてきた。そういう事情だから、七瀬の希望を考える限り、兄貴の厚意も半分くらいありがたいとは思う」


奏介がほんの少し瞳を揺らしてから、心を探るように私の頬を撫でる。
優しい力がくすぐったくて、私は思わず片目を閉じた。


「……兄貴に教わることになった事情はのんだ。だが約束してくれ、七瀬。絶対に今夜のように、無防備にはならないこと」

「無防備、って」


ほんの少し反発する気持ちで、彼の言葉尻を拾って繰り返した。
でも、それと同じことを藤悟さんが呟いていたのを思い出し、私は結局、言葉に詰まってしまった。


「七瀬?」


奏介が、怪訝そうに眉を寄せて、私の名を呼ぶ。


「……勝手に決めて、ごめんなさい。約束します」


私は頬を撫でる奏介の手に手を重ねて謝った。
彼が座る位置を横にずらして、私との間隔を狭めるのが、伏せた視界に映り込む。
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