扉の向こうはいつも雨
 長い長い通路を歩いて目の前に1つの扉。
 いつものように跪いて天に祈りを捧げる。

 そして………。

「本儀式では目隠しをしません。」

 それだけ告げた親戚の人は小部屋……ではなく帰って行くみたいだ。

 それはそうか。
 私を家に帰す為に待つ必要はないのだから。
 けれど……目隠しはして欲しかったな。

 目隠しをしなくても暗い通路の闇は桃香を飲み込んでしまいそうだった。
 足は勝手にカタカタと震え出し、竦んでしまいそうで立っているのがやっとだった。

 どれだけ経っただろうか。
 恐怖が永遠に感じた頃。

 目の前の扉からノックの音が響いた。

 それが合図となり、走馬灯のように今までの思い出が蘇った。

 楽しかったこと。
 小さい頃に儀式が嫌で泣いたこと。
 絢美が生まれて嬉しかったこと。

 学校で友達と勉強したり、遊んだり……。
 仕事もして、大変なこともあったけど、憧れの人ともお話できた。

 恋人……作りたかったけど、婚約者がいる身だからね。一応。

 思い出に浸っていたらしく、もう一度、今度は強めにノックの音が響いた。

 覚悟を決める時だ。

 私が強くなれたのは、絢美がいてくれたお陰。
 私が逃げ出せば絢美が身代わりにさせられるかもしれない。

 それだけはダメ。
 絢美は大切な妹だから。

「ありがとね。絢美。……バイバイ。」

 小さく呟いて一歩前へ。

 震える手でノックを返した。




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