きみが赤を手離すとき。


「先輩って、色白な人がタイプですか?」

「んー、あんま気にしたことないけどなんで?」


だって遠くから見た美羽さんが白くて美人すぎたから。

私は地黒だし、美羽さんの透き通るような肌とは大違い。


そういえばトマトって、美白効果なかったっけ?

毎日毎日食べてるのに、色が白くならない私はやっぱり先輩の好みにはなれないらしい。

ひとりで落ち込んでる私を見ながら、先輩が頬杖をつく。


「広瀬ってさ、好きなヤツいないの?」

どの口が聞いてるんですか。そして、それを答えなきゃいけない私の気持ちも少しは察してください。


「いますよ。好きな人ぐらい」

ムスッとして、答える。


「どんなヤツ?」

「顔と性格は文句のつけようがないほど完璧です。でも、少しだけ女心を分かってない部分がある人です」

異性として見られてないことは知ってるけど、こんな私にだって女心は備わっている。


「ふーん。広瀬に好かれるなんて、よっぽどいい男なんだな。そいつ」

だから、どの口が言ってるんです?


もう、いっそのこと先輩ですと言ってしまおうか。いや、そう考えただけで、心臓がバクバクと臆病になる。

周りからサバサバしてて、潔いと言われる私が、好きというたったの二文字を言えないだなんて……。


「あ、そろそろチャイム鳴るから行こうか」

先輩はそう言って、未練の欠片も見せずに早々と立ち上がる。


恋なんてするもんじゃないね。

ほら、またすぐに苦しくなってきた。

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