冷たい蜂蜜
時間が進んでいくうちにいつもの社員が顔を出す。



「大本さん、今日は随分早いですね!」と私に声を掛けたのは、若田 藍夏。



彼女はこう言った「今日いつもより、オシャレですね」


嫌味なのか?私は普段と同じような服で、髪も一つにまとめただけ。


棘のある言葉に違和感を感じながらも仕事に出た。





休憩時間なぜか音楽を聴きたくなり、いつものお気に入りスポットに向かった。


会社の横にある小さな公園



その公園のベンチに座りお昼ご飯を食べたり、


ほんのちょっと余った時間でお気に入りの読みかけの本を読んだり、



私を励ましてくれる場所、私を否定しない場所。



別に会社で嫌なことがあった訳ではなく、


自分にイライラしたりしてる訳でもなく、


ただどうしたらいいのか分からず目を瞑りにかけた自分を笑いたくなっただけ。



そう、笑いたくなっただけ。


夏の匂いを求めた。





この公園は古いし、遊具も定番のものしかない。



でもこの公園はこの地域に住んでいる人がお金を出しあってできた公園。



そう簡単には壊されたくない、壊してほしくない。



もしこの公園が壊されたら、私は居場所がひとつ減る。



そして誰かの手によって壊されたものは再生出来ず、ただ見ていることしかできない傍観者の仲間入り。



この公園だって生きてるんだ、命ある生き物と同じ。




ベンチに座った


私は携帯を取り出し、イヤホンを差した。


イヤホンを両耳に付け周りの音を遮断した。


聴きたい音楽もなく、適当に一番上にある曲を聴いた。



片思いの歌



この曲の自分はある人を思っているが、その相手には恋人になりそうな人がいる。


自分はバランスが分からず、失恋するとしか思えない予感を抱いていた。


告白はできず、自分に自信がなく時間が経てば…と動かないまま。


結局相手に恋人ができ、自分は身を引いた。


奪いたいと思いながらこの恋を諦めた。




なんていうか、私の今の心境に合わない。


かと言って聴きたい曲もない。


というか今聴いた曲、駿人目線からみた曲なのかな。



ちょっとわからない



今思えば私の好きな曲は大体、片思いの曲or恋愛の曲。



ほとんど今の心境に合わない。



休憩終わりの時間がどんどん迫り、私は会社に戻った。




< 52 / 56 >

この作品をシェア

pagetop