お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
彰人は十四時半頃、私は十八時前に自宅を出てそれぞれの飲み会に出席し、さらに数時間が経つ。
時刻は二十三時を回ったところだ。
今は二次会のカラオケの最中で、男性九人の中に女性は私ひとり。
一次会に参加していた女子社員ふたりは既婚者で、『旦那が』『子供が』という理由で帰ってしまった。
私も帰ろうとしたのだけれど、『織部さんはまだ平気でしょ』という上司の言葉で、ここにいる。
セクハラに厳しい時代のため、『独身だから遅くまで遊んでいられるはずだよね』とは言われなかったが、暗にそう思われての半強制的な二次会参加であった。
終電までなら確かに時間に自由は利くけど、カラオケは好きじゃないんだよ……。
気乗りしない理由は、歌が下手だということにある。
思いきり音程を外すとまではいかない、微妙な下手さが困りどころ。
私の歌は褒められることはなく、かといって『面白いくらい下手だね』と笑われることもない。
感想を言い難い雰囲気にさせてしまうこの歌唱力のせいで、学生時代からカラオケは苦手であった。