お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
「信じてよ」と念を押すように言った彼は、その顔に笑みを取り戻して歩きだす。

私も彼について足を進め、古いビルの中へと入っていった。


階段で二階に上がるとすぐに、ワインバーのドアが見えた。

明かり取りの小窓にステンドグラスをはめ込んで、藍色に塗装した趣のあるドアである。

それを成田さんが開けてくれて、店内に足を踏み入れたら、そこも味わい深いインテリアでまとめられた居心地のよさそうな空間であった。


L字型のバーカウンターに椅子が七つ並び、四人掛けのテーブル席が四つ。

テーブル席の椅子はアンティーク調の布張りで、それぞれが微妙に色やデザインを違えている。


天井ライトの傘はステンドグラスで、店内の二カ所の窓も同じ。

明治の文明開化から大正にかけて流行ったような、日本生まれの洋を感じさせるレトロな空間には馴染みがあった。


バーカウンターはないけれど、私の実家のリビングも似たような雰囲気である。

富豪であった頃の先祖ゆかりの家具を、修理しながら今も大切に使っている。

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