お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
そういうところは私の両親の褒められる点で、商才はなくても物の良し悪しは見極められる人たちである。

古いからと言って、価値ある調度品を簡単に処分するような愚か者ではないのだ。


「いらっしゃいませ」と、この店のマスターと思われる中年男性がカウンター内から私たちに声をかける。


「ラストオーダーは零時半となっております。よろしいでしょうか?」


零時半になる前にここを出なければ終電に間に合わないので、私は「はい」と答える。

成田さんも頷いて、カウンターテーブルに並んで座った。


テーブル席は埋まっていて、カウンターにも三人の先客がいる。

大通りから外れていて、ラブホテル街に近いという立地条件はよくないながらも、なかなか繁盛しているようだ。


私はメニュー表の中から、赤ワインをジンジャーエールで割ったキティというカクテルを選び、成田さんは白のグラスワインを注文した。

すぐに出されたグラスを合わせて乾杯し、「素敵な雰囲気のお店ですね」と私が言えば、彼は「気に入ってくれてよかった」と微笑んだ。

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