お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
《終電の時間だぞ。乗ったのか?》という確認の電話である。


「ええと、それが……」


ばつの悪い思いで、答える声が小さくなる。

四十分ほど前の電話で、私は大人で判断力があり、困る展開には至らないから心配無用だというようなことを主張したためだ。


この状況を隠したいと思ったけど、帰ってこない私を心配させ続けるわけにいかないので、嘘はつかずにボソボソと打ち明ける。

成田さんが白ワインをボトルで二本飲んで酔い潰れてしまい、駅まで行けず、タクシーを捕まえることもできなかったという事情を。


すると《やっぱりな。そんなことだろうと思った》と、叱られるのではなく呆れられた。

彼の声が落ち着いているためか、私もムキにならずに素直に「ごめんなさい」と謝ることができた。


「ネットカフェが近くにあって、そこで始発を待つよ。だから寝ていいよ。お説教は帰ってから聞く」


本当は今すぐ家に帰りたいけど……という思いから、私の声に疲労が滲む。

彰人はわかったと言うのではなく、《アホ》と低い声で非難した。

そして《寝られるわけがないだろ。車で迎えに行くから待ってろ》と言い、スマホの向こうに車のキーを手に取ったような音が聞こえた。

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