お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
中本主任の器用さに驚くとともに、もうひとつ、ハッとしたことがある。

「これって……私の案を形にしてくれたんですよね!?」と興奮気味に問いかけたら、彼が丸眼鏡の奥の瞳を細めて「そうだよ」と頷いた。


こんなたまチョコフィギュアがあったらいいなと、子供の頃から書き溜めたノートやスケッチブックを、私は十冊持っている。

その中のひとつに、“明治の文明開化シリーズ”というものがあって、どこか日本らしさを残すレトロな西洋風の家具を、スケッチブックに描いていた。

私の下手くそなイラストが、見事な試作品となって中本主任の手のひらにのっているのは、感動という言葉以外では表せない。

嬉しくて目を潤ませたら、それに気づいた彼がバツの悪そうな顔をして、人差し指で頬を掻いた。


「ええと……喜ばせておいてなんだけど、これは形が複雑で生産コストがかかるから、会議に出しても採用されないと思うんだよね……」


商品化はできないと言われて滲んだ涙はすぐに乾き、がっくりと肩を落とした。

そうだよね。ひとつ二百五十円ほどのたまチョコだから、そんなに精巧なフィギュアを入れるわけにいかない。
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