お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
生産コストか……。

今の私はただのマニアではなく、製作班のメンバーなのだから、もう少し現実的な案を出せるように、頭を切り替えなければ。


そう思っていたら、中本主任が腕時計に視線を落とし、「十二時過ぎたな。織部さん、お昼休みに入っていいよ」と言った。

「はい」と答えた直後に、机上に置いていた私のスマホが短く震える。

見れば、【一緒にランチできる?】という茜からのラインメールで、私はホッと息をついた。


憧れの部署に異動できたことはかなり嬉しく、張り切って仕事しているとはいえ、まだ三日目なので緊張は強い。

この部署の女子社員と一緒に昼食を取れるほどに馴染んでもいないし、こうして誘ってくれる茜の存在はありがたかった。


中本主任はエプロンを脱ごうとしていて、他の社員も財布を手に、ひとりふたりと、ドアに向かっていた。

私もお昼に入ろうと、茜にOKの返事をしていたら、後ろから「織部さん」と誰かに声をかけられた。


肩越しに振り向いた私は、「はい?」と疑問形で答えて面食らう。

私の座る椅子の斜め後ろに、なぜか受付嬢の東条さんが立っているのだ。

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