お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
「専務の恋人だからか。異動時期でもないのに、おかしいと思ったんだよな」と中年の男性社員がしみじみと呟いたのを皮切りに、皆が思い思いに口を開く。


「いつから付き合ってるの?」

「同棲ということは、ご結婚は近々ですか?」

「専務は社長の息子だから、玉の輿だな。織部さんの未来は社長夫人か」


焦りを顔に浮かべた私は、左右と後ろを順に見てから、机に両肘をついて頭を抱えた。

ああ、もう……。

みんなの中で私と彰人の交際は決定事項とされ、想像は結婚後にまで及んでいるようだ。

否定している本人がいる場でも、これなんだから、社内のあちこちで交わされる噂話には、どこまで尾ひれがつくことやら……。


机上のスマホが震えて【莉子、どうした?】と茜がラインメールで問いかけてくる。

「開発部の人だけでも誤解を解かなくちゃ……」と小声で呟いた私は、【ごめん、今日のランチは無理!】と返信し、みんなと対峙するべくクルリと椅子を回した。


それから半日が過ぎ、二十時頃に帰り着いた私は、リビングのカウチソファにぐったりと寝そべった。

夕食を取る気にもなれないほどに疲れているのは、噂の火消しに忙しかったせいである。
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