お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
すると、係長の声だけが響いていたフロアに突如、電話が鳴り響く。

鳴ったのは部長デスクの電話機で、岩寺部長が受話器を取り、誰かと会話していた。


始業時間を過ぎれば、内線外線問わず、電話がひっきりなしにかかってくるので、それは珍しいことではない。

係長は気にせず、手にした用紙を見ながら全体指示を読み上げており、私たちもメモすることに意識の大半を向けている。


「セボンイレブンさんは、来月の十五日から自社ブランドの秋の新商品を並べるそうなので、それより三日早く、うちの新作を出すことが決まりました。各班のセボンさんの担当者はーー」


係長の指示出しを、「ちょっといいかな」と言って遮ったのは、岩寺部長だった。

電話は終えていて、誰かを探すかのようにフロア全体に視線を動かしている。

朝礼を止めてまでの急ぎの連絡が入ったためだと思われるが、それは一体なんだろう。

気になりつつも、部長を通しての連絡なら、私とは無関係に違いないと、呑気に構えていた。

私は役職についていない下っ端で、重要案件を抱えることのない、サポート的な仕事しかしていないからである。

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