お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
十点の札で口元を隠して、オホホと上品に笑う初老の婦人。

それを見ている私は、よい着物を選んだと褒められたことに、引っかかりを感じていた。


私が選んだ訪問着はそこそこの値段はしそうだけど、特別に高価なものには見えないし、他のどの着物も素敵であったのに。

選んだ理由は好みであったからという以外にはなく、私が目を瞬かせていたら、彰人と視線が合った。

彼はにやけそうなのを咳払いでごまかして、真面目な声で言った。


「鶴亀呉服店の奥様の評価と、私も同意見です」


その呉服店の名前を聞いて、私はハッと思い出した。

あれは一週間ほど前の、自宅でのこと。


リビングのカウチソファでくつろいでいた私に、彰人が後ろから近づいてきた。

『お前はどれが好みだ?』と見せられたのはタブレットで、鶴亀呉服店のホームページが開かれていた。

そこに載せられていた数点の訪問着の中から、私は生成り色をして小菊の柄のものを選び、指差した。

小菊は秋に相応しく、控えめな美しさを感じる。

生成り色の生地も明るい印象で、着るとしたらこれがいいと思ったのだ。
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