お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
『ふーん』と彰人が答えて、着物についての会話はそれで終了する。

その後、彼はすぐにリビングを出て、書斎へと引き揚げた。

なんだったのだろうと思いつつも、私の興味はすぐに手元にある開封途中のたまチョコに向けられた。


それっきり、着物のことは忘れていたのだが、今日はあの時に見せられた訪問着を、無意識に選んでいたみたい。

どれが好みかという彼の質問の狙いは、ここにあったのだ。


おそらく並べられていた着物の中で、鶴亀呉服店が提供したものは、私が着ている一着のみ。

呉服店の奥様は、自分の店の商品を贔屓目で見るに違いないし、それを選んで着てもらえたら、嬉しくなって評価を上げたくなるものだろう。

私の十点満点のうち二点ほどは、彰人の策略によるものではないかと勘ぐっていた。


観客席からは開発部の仲間たちの拍手が湧き、うちの両親は手に手を取り合って、早くも涙ぐんでいる。

「莉子には嫌がられたけれど、小さい頃に無理やり躾けたことは、無駄ではなかったのね!」と、母は自分の子育てを肯定して、成果を喜んでいた。

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