お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
座敷には換気扇がないので、庭に面している内縁側のガラス戸が開放されていた。

それでも辺りにはふんわりと、だしのいい香りが漂っている。

そして焼き上がっただし巻き卵を切って盛り付け、大根おろしを添えたら……ちょうど制限時間となった。


見た目は綺麗にできたけど、どうかな。

やっぱり、自信がない……。


不安で落ち着かない心を抱えたまま、すぐに審査される。


まず最初に呼ばれたのは、東条さんだ。

彼女が両手に持つ角皿には、茶巾寿司が三つずつのせられている。

それを審査員席まで運んで、彰人と和食料理の巨匠の前に置き、「どうぞお召し上がりください」と自信ありげな声で言った。


観客席からは、「華やかだな」「美味しそう」という感想が聞こえる。

私の目にもそう映っていた。


綺麗な黄色に焼き上げた薄焼き卵は、破れもこげもなく、包み方は花のように美しい。

茶巾の口は三つ葉の茎で器用に縛ってあり、上にはイクラや海老、栗など、それぞれ違うものがのせられていた。


自分の調理台まで戻ってきた東条さんは、箸を持った審査員のふたりに、微笑んで説明する。


「中の酢飯は、三つとも違う味付けにしておりますので、全てに箸をつけてください」

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