お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
木のスプーンで茶碗蒸しを口にしたふたりとも、「美味しくできています」と褒め言葉を西尾さんにかけていた。


私の胸には『どうしよう』という動揺が広がり、鼓動が速度を上げ続けている。

東条さんも西尾さんも料理上手なようで、不安がさらに膨らんでいた。

彰人のレシピで作っただし巻き卵なら勝てると思いたかったけど、彼女たちの料理を見たら『無理かもしれない……』と、今からため息をついていた。


「次は織部さん、お願いします」と巨匠に言われ、「はい」と答える声が裏返ってしまった。

彰人がプッと吹き出して、私は恥ずかしさに頬を熱くする。

だし巻き卵を三切れずつのせた皿をふたつ、お盆にのせて審査員席へ運ぶ。


こんなに緊張したのは、いつ以来か……。

観客席の端に座るうちの両親から、「頑張れー、頑張れー」という念仏のような応援が聞こえてくる。

『今からなにを努力すれというのよ』とツッコミを入れられないほど、今の私には余裕がなく、震える手で審査員のふたりに料理を出した。
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