お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
秘書の質問に、専務はなんと答えるのかと緊張していたら、「西尾は関知しなくていいことだ」と低い声を聞く。


「織部を入れてくれ。お前は下がっていい」


冷静で事務的な口調だが、付け足された咳払いには苛立ちが滲んでいた。

「はい」と返事をしつつも、廊下に立つ私に振り向いた彼女は、不服そうな顔をしている。

「どうぞお入りください」と横にずれて、立ち位置を譲ってくれたが、私を見る目には非難めいたものを感じた。


そんな目で見ないでよ。

西尾さんを部外者扱いしたのは、私じゃないのに……。


更衣室では受付嬢の東条さんに敵意のある視線を向けられて、今は専務秘書の西尾さんに睨まれた。

今日は朝からついていないと思いつつ、「織部です。失礼します」と声をかけ、一歩入室する。

保身のため、少しでも印象をよくしたいという気持ちが、私に深々と頭を下げさせる。


後ろでパタンとドアが閉まり、電子錠がかけられた音がした。

西尾さんは秘書課へ戻っていったことだろうし、専務とふたりきりという状況に、鼓動がまた少し速度を上げた。
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