お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
他のお坊っちゃまたちも、一億円の名馬を購入して馬術大会に出場したとか、実家の敷地が東京ドーム八個分だとか、お金を積めば誰でも入れると聞いたことのある、とある海外の大学院に留学していたことなど、色々な自慢話を披露してくれた。


『それで、あなたはなんの努力をしてきたの?』と聞きたくなるような話ばかりで、私の中の御曹司に対するイメージはかなり悪い。

そのくせ見合い相手の私には、美しく教養があって、陰から夫を支える大和撫子のような淑女を求めてくるから、冗談じゃないと言ってやりたくなる。


高旗専務は私の見合い相手ではなく、まだ秘書と会話する声しか聞いていないというのに、条件反射的な不快感に襲われて、思わず顔をしかめていた。

『うちの会社の専務も、お坊っちゃまなんだ……けっ』と心の中で毒づいたら、西尾さんが「どのようなご用でお呼びになられたのでしょう?」と専務に問いかけていて、私の意識はその問題に戻される。


そうだった。

相手が私の嫌いな御曹司であっても、専務からの叱責は、私にとって大問題だ。

クビにされては困ってしまう。


ファンベル製菓に入社することは、子供の頃からの私の夢だった。

それは私の趣味と関係していて、奨学金を借りて東京の大学を出た後も、静岡に帰らずにそのままこっちで就職したのは、実家から逃げ出したかったという理由だけではない。

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