お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
エレベーターに乗り合わせた社員たちと、どうやら向かう先が一緒のようで、全員が駐車場のある地下で降りた。

彼らは私たちの後ろを歩いているので、車に乗るまで、まだ彰人に話しかけることができない。

彼が運転席で、私が助手席に乗り込む。

『さあ、同居の延長をお願いしよう』と意気込んだ私であったが、エンジンをかけた彰人に「明日の引越しは九時だったよな?」と問いかけられて、笑みを失ってしまった。


「うん、そうだよ」

「俺も手伝うから」

「ありがとう……」


引越ししたくないと言わなくてよかった。

手伝うということは、予定を空けてくれたのだろう。

同居の終わりは決定事項として、彰人のスケジュール表に書き込まれているみたい。

寂しいと思ってくれるようだけど、それはきっと、私ほど重たいものではないのだろうね……。


地下駐車場を出て社屋前の道路を走る車は、右折して大通りに入る。

車窓を行き交う人は皆、秋の装いだ。

彰人と初めて会話した見合いの日、早く振袖を脱ぎたくなるような夏真っ盛りであったのに、季節が移り変わったのだと、過ぎた月日をしみじみと振り返る。

最初はふたり暮らしを面倒だと捉えていたけれど、今思えばあっという間で、楽しかった思い出ばかりだ……。

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