お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
隣から小さなため息が聞こえた。

車窓から運転席側に視線を向ければ、彰人の口角はややつり上がっている。

彼は気を取り直したような明るい口調で、話しかけてきた。


「夕食になに食いたい? フレンチでも寿司でも、なんでも好きなものを言え。最後だからな。ふたりで旨いものを食べに行こう」


最後という言葉に胸が痛んだが、彼が楽しい雰囲気を作ろうと努力しているのが伝わるので、私も無理して笑顔を浮かべた。

「お寿司が食べたい!」と弾んだ声で答えたが、すぐに思い直して意見を変える。


「やっぱり帰る」

「あ? 俺と飯を食いに行くのは嫌なのか?」

「違うよ。家で彰人の作ったご飯が食べたい。最後の夕食だから……私の食べたいものでいいんでしょ?」


赤信号で停車した車内で、「彰人の手料理が一番美味しい」と笑いかければ、彼も私に優しい目を向けて微笑み、「わかった」と頷く。

しかし、その微笑みはどことなく、ぎこちないものである。

きっと私の作り笑顔も、わざとらしいと思われていそうな気がする。
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