お見合い相手は俺様専務!?(仮)新婚生活はじめます
聞き間違えだろうかと疑っていたのだが、「帰したくないと言ったんだ」と低い声で答える彼に、テーブルの上で手を包むように握られて、私の鼓動は大きく跳ねる。


「これからは期限を設けずに、俺とこの家で暮らさないか?」


その声は誠実で、からかってやろうと企んでいる雰囲気は微塵もなく、彼の瞳も真剣そのものである。

緊張もしているようで、喉仏が上下にコクリと動くのが見えた。


無期限で私と一緒に暮らしたいということは、つまり……。


湧き上がる期待が溢れ出さないように気をつけて、私も真顔になって疑問点をぶつけてみる。


「それは、私と交際したいという意味なの? 俺に惚れさせて振ってやると言ってたのに、敗北宣言と捉えていいの?」


期待と不安が入り混じる。

同居の延長が、私の望む意味と違っているかもしれないと思えば、鼓動が嫌な音でうるさく鳴り立てた。


すると、私の右手を覆う彼の手に、グッと力が込められる。

プライドを自らへし折った様子の彼は、「俺の負けでいい」とはっきりと口にした。


「莉子が好きだ。生意気で、甘え方を知らず、口喧嘩ばかりだが、それも含めてお前を可愛いと思ってしまう。莉子を失った生活は、考えただけで苦しい。俺のそばにいてくれ」


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